相続財産の分け方について

相続財産の分け方は、遺言書がある場合とない場合とでは手続きが異なります。(実際には、相続の仕方は3つあります。)

遺言書亡くなられた方(被相続人)が遺言書を遺していた場合、原則として、遺言書の内容に沿って相続する。
法定相続法律上定められている、各相続人の、法定の相続分割合にのとおり相続する。
遺産分割協議相続人が全員で協議して、遺産の分割方法を決める。

遺言書がない場合は、原則として法定相続分の割合で相続することになりますが、おおむね相続人の間で分割方法について遺産分割協議を行うケースが多いでしょう。

遺産分割協議と、相続財産の分け方について

亡くなられた方(被相続人)が、遺言書を作成しているとは限りません。
見つけた遺言書が法的な要件を満たしていない場合には、①法定相続(先述した法定相続分の割合で分ける)か、②法定相続人全員(相続放棄をした方を除く)で、【誰が】【どの相続財産を】【いくら】相続するかを、法定相続人全員で話し合って決めることになります。相続財産(遺産)の分け方について、法定相続人全員で話し合うことを、「遺産分割協議」といいます。

遺産分割の方法は、現物分割、代償分割、換価分割、共有分割の4つ分け方があります。

遺産分割

遺産分割協議の注意点:相続人に認知症の方がいる場合

認知症や知的障害などで判断能力が十分になく、財産の管理や契約を自身で行うことが難しい相続人がいる場合は、成年後見制度を利用し、裁判所に選ばれた成年後見人が、その方(被成年後見人)に代わり遺産分割協議に参加します。

ただし、後見人に親族が就任している場合又は就任する場合で、被成年後見人である本人と親族である後見人が、ともに相続人の立場にある場合は、 「特別代理人」の選任を家庭裁判所に申し立て、家庭裁判所が遺産分割協議の当事者ではない第三者を特別代理人として選び、被成年後見人の特別代理人が遺産分割協議に参加することになります。

遺産分割協議の注意点:相続人に未成年の方がいる場合

相続人の中に、未成年の方がいる場合、未成年者には代理人を立てる必要があります。通常、未成年者の代理人は、親権者が法定代理人となりますが、遺産分割協議という場面では、親権者が未成年者の代理人になれないことがあります。

遺産分割協議は、”相続人全員で遺産分割協議を行う”ことが必要ですが、相続人の中に未成年者とその親権者が、ともに相続人である場合、親権者が自身に有利な遺産分割協議を行うことがありえることから、親権者は未成年者の代理人となることができません。

未成年者とその親権者がともに相続人となり遺産分割協議を行う場合は、「特別代理人」の選任を家庭裁判所に申し立て、家庭裁判所が遺産分割協議の当事者ではない第三者を特別代理人として選び、未成年者の特別代理人が遺産分割協議に参加することになります。

遺産分割協議を行うときの流れについて

被相続人が死亡し、遺言書がない場合

手順1:相続人の確定
手順2:相続財産の内容について把握、調査する
手順3:遺産分割協議をする
手順4:遺産分割協議書を作成する

遺産分割協議を行ったら、「遺産分割協議書」を作成する

遺産分割協議を行い、遺産の分け方について話がまとまったら「遺産分割協議書」を作成します。遺産分割協議に、法定相続人のうち一人でも協議に参加していないと場合は、その遺産分割協議は無効となります。

遺産分割協議書には、法定相続人全員が署名捺印を行います。遺産分割協議書に捺印をする印鑑は、実印を使用しましょう。遺産分割協議書を作成する前に、実印をお持ちでない法定相続人がおられたら、実印を作成・印鑑登録まで済ませておきます。法的には、遺産分割協議書に捺印する印は実印でなければならないとは書かれていませんが、相続手続きを進めるにあたり、必ずといえるほど、遺産分割協議書(実印での捺印)と印鑑証明書はセットでの提出を求められます。なぜならば、実印による捺印と一緒に印鑑登録証明書があることで「確かに本人が実印を使って押した書類」であると認められるからです。

なお、「遺産分割協議書」に不備があると、作り直しが必要となったり、全員が実印で訂正印を押印しなければならなくなるなど、かなりの手間がかかるので、書類の作成は弁護士に依頼することがオススメです。

【関連コラム】

相続発生後は遺産分割をいつまでにすべきか?

弁護士に依頼するメリット

遺産分割協議書の作成を依頼できる

遺産分割協議書の作成は弁護士に依頼することができ、弁護士が作成した遺産分割協議書に不備が発生する心配は少ないので、相続手続きもスムーズに進めることができます。

相続人全員での遺産分割協議が成立したら遺産分割協議書を作成する必要があります。作成した遺産分割協議書をもって、金融機関や法務局で相続手続きを行うことになりますから、遺産分割協議書に不備があると、各機関から受付てもらえず相続手続きができない可能性があります。

出来る限り円満に解決したい人のサポートもできる

遺産分割協議を行うことにより、家族間でのトラブルは避けたいと考えている方は多いと思います。ただ、金銭も絡むことから、意見が合わずに感情的になり対立してしまうことがあります。もめ事になりそうなときは、前もって弁護士に相談し弁護士が話し合いに介入することで、法的な考え方や解決方法の提案などを行い、相続人が冷静に話し合いができるようにサポートします。

すでにトラブルが発生していても、解決を依頼することができる

遺産の分け方で対立したら、話し合いの続行が難しくなることがあります。また、普段から仲が悪い場合は、話し合いの席につくこともないこともあります。弁護士に、意見が対立する相続人と交渉を任せたり、交渉が決裂した場合は遺産分割の調停や審判、遺産分割訴訟の代理人を依頼することができます。

精神的ストレスの軽減ができる

遺産分割の話し合いは、大きなストレスと感じる方は多いようです。これまで仲が良かった家族であっても、実は今までの恨みつらみがあり、一気に爆発させてくるケースもあります。相続トラブルになると億劫だからと、相続が発生しても手を付けない方もおられます。

弁護士に遺産分割協議(又は調停、審判、訴訟)を任せることで、自分が直接家族とやり取りをしなくてよいので、ストレスを軽減することができます。

遺言書の内容と異なる遺産分割協議をする場合について

被相続人が、遺言書をのこしている場合、被相続人が亡くなる前の最後の意思表示ですので、基本的には相続人は遺言内容に従う形になります。しかし、相続人全員が遺言の内容に反対し、遺産分割協議をすることに合意をしている場合は、遺産分割協議を行うことも可能です。

遺言で遺言執行者が指定されている場合は注意が必要

遺言書で遺言執行者が指定されている場合は、相続人全員が遺産分割協議をすることに合意していても問題が生じることがあります。
遺言執行者は、遺言内容を実現させるために、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有しています(民法第1012条)。相続人は、遺言執行者の遺言執行を妨げることはできません(民法1013条)。

しかし、遺言の内容が相続人に相続させる内容だった場合且つ、相続人全員が遺言書とは異なる内容での遺産分割を希望している場合で、遺言執行者の了解を得たうえであれば、遺産分割をすることが許されます。

遺産分割調停とは?

遺産分割協議が相続人間の話しあいでまとまりそうにない場合は、家庭裁判所に遺産分割調停の申し立てを行います。

調停は、家庭裁判所の調停委員会(裁判官1名と調停委員2名で構成)が、当事者双方から事情や言い分を聴いたり、必要に応じて資料等を提出してもらったりした上で、法律の枠組にかなった適切な解決ができるように必要な助言をしながら、合意を目指して話合いを進めていくことになります。

遺産分割協議によくあるお困りごとについて

  • 遺産分割の方法は、家族で話し合ったが、協議書の作り方がわからない
  • 相続財産がわからないから話し合いができない
  • 遺産分割協議を行うことで、家族間の仲が悪くならないようにしたい
  • 全員が納得感がある遺産分割にしたい
  • 遺産の分け方について、話し合いが一向に進まない・対立している
  • 遺産の分け方の話し合いをしようにも、話し合いに応じてくれない相続人がいる
  • 分け方が難しい財産である(例、財産が自宅不動産のみ)
  • 自分以外の相続人が裏で結託していて、納得ができない遺産分割案を出されている
  • 被相続人の介護やお金の面でも援助をしてきたので、多めに遺産をもらいたい
  • 裁判所から、遺産分割調停申立の書類が届いた

このようなお困りごとがある場合は、当事務所の弁護士が遺産分割のサポートします。

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