家族構成やご状況など

家族構成、相続財産

  • 依頼者M様
    福岡県在住
    家族構成:配偶者、子
  • 被相続人
  • 相続人
    依頼者、兄の2名
  • 相続財産
    主な財産は自宅不動産(土地・建物)。その他、預貯金等約500万円

ご状況

  • 自宅不動産は父の遺志を尊重して守りたい。しかし、兄は売却を強硬に主張。
  • 被相続人の遺言書はない。
  • 相続財産である自宅不動産に、被相続人とMさんと子の3名で暮らしていた。被相続人が亡くなった後も、引き続きMさんと子が暮らしている。
  • 被相続人が亡くなってから約10年が経過している。
  • 相続発生から約10年間、兄が遺産分割の話し合いに応じない。

結果

ご依頼前
父の意志である先祖代々の自宅不動産を守っていきたい。兄はMさんが不動産を取得するのであればその代償金として5000万円以上の法外な金銭を請求していた。
結果
Mさんの被相続人に対する寄与分を、当事務所が丁寧に主張・立証したことで、裁判所はMさんの介護の寄与分を約850万円と評価した。
不動産の評価額を相手の主張する1億5000万円から不動産鑑定等の手法により6700万円までの減額に成功。最終的にMさんは兄に対して2300万円の代償金を支払うことで自宅不動産はMさんが単独で相続することが実現した。
結果として、もともとの兄からの代償金請求額から大きく減額に成功。

ご相談の内容

父の死後、兄弟間で主に自宅不動産を巡って相続トラブルになった事例です。

母の死後、父は自宅不動産で一人暮らしを続けていましたが、ある時父に癌が見つかりました。
医師からは、①今後父の一人暮らしは極めて難しいこと、②余命はあと3年であることを告げられました。
Mさんは当時、配偶者と子とで円満に生活をしていましたが、医師からの①②の説明を受けたこと、父は病院や施設ではなく自宅で生活することを強く希望していたことから、意を決してMさんは配偶者との協議を重ね、当時未成年だった子を連れて、父との同居を開始しました。

父との同居開始後は、徐々に身の回りのお世話、介護の負担度があがっていきました。
Mさんはフルタイムで働きながら、父の希望を尊重し、丁寧な介護やお世話を行い(父がヘルパーやデイサービスを利用を拒否)、献身的に尽くしてきました。父が余命宣告よりも長く、5年以上自宅で過ごせたのは、日々のMさんの献身的な介護の成果だとMさん配偶者は言います。
そしてMさんは、父と同居の中で、父の生活費や自宅不動産のリフォーム、修繕費用など多額な負担していました。

自宅の土地は、祖父母の代で購入した土地で、父はとても自宅に愛着を持っていました。そして、Mさんにはことあるごとに「家も土地もお墓も仏壇も全部Mに頼む」と言い続け、Mさんも父や祖父母の遺志を引き継ぎ、自宅などを今後も守り続けていく意思を父に伝えていました。

父が亡くなった後、自宅を整理しましたが、父は遺言書を残していませんでした。そこで、Mさんは葬儀のあとから当事務所に相談に来られるまで、何度も兄に遺産分割をしようと試みました。また、自宅不動産をMさんが相続する代わり、Mさんが兄に対して固定資産評価額2000万円の法定相続分(2分の1)の代償金を支払うという提案も行っていましたが、兄は「急いで決めなくていいんだ」と話をそらし続けました。

相続発生から約10年が経過したころ、兄がいきなり自宅不動産は1億円以上の価値があるのだから、代償金は少なくとも5000万円は支払うように、それが出来ないのであれば自宅不動産は売却して現金で分けたいと言われ対応に困って、当事務所にご相談に来られました。

具体的な課題

  1. 父の遺言書がないこと。
  2. 遺産の評価額は、相続発生時ではなく遺産分割時の時価であること。
  3. Mさんの被相続人に対する特別の寄与の評価

課題に対する弁護士法人アジア総合法律事務所の対応

1.父の遺言書がないことについて

父は、生前から常々Mさんに対して、すべてをMさんに任せる旨の意思表示をされていましたが、そのことが法的に証明できる遺言書などが存在しておらず、相続人間で遺産分割協議を行う必要がありました。
Mさんは父の遺言書がないことから、遺産分割の申し入れを兄に幾度となく行っており、Mさんが不動産を取得する代わりに兄に対して代償金を固定資産評価額の2分の1(兄の法定相続分)支払うことを提案していました。
当事務所がMさんの代理人として就任してからまずは、話し合いでの解決を目的として、兄との話し合いの場を設け、Mさんが父に対して行ってきた特別な寄与があることの説明をしたり、自宅不動産について話し合いました。しかしながら、兄は自宅不動産に1億円以上の価値があり、5000万円以下の代償金では一切応じるつもりがないこと、代償金が支払えないのであれば自宅不動産を換価処分することを求めてきたことから、話し合いでの解決は見込めず、遺産分割調停の申し立てを行うことにしました。

2.遺産の評価は、相続発生時ではなく遺産分割時の時価であることについて

今回の相続において、主な遺産は自宅不動産です。そして、その自宅不動産の時価額によって、Mさんが兄に支払う代償金額が大幅に変わることになります。
現在、福岡の地価は、全国的でもトップの上昇率でありることから具体的な時価額を知ったうえで戦略を練る必要がありました。
そこでMさんは、不動産の評価の専門家である不動産鑑定士に依頼をして、自宅不動産の時価額を算出することにしました。当事務所では、不動産鑑定士が算出した時価額について、弁護士が不動産鑑定士と連絡を取り、自宅不動産の評価のポイントや意見を伺うことで、その評価に至った経緯を理解することに努めました。そうすることで、調停においても、不動産鑑定士による自宅不動産の時価額のレポートの提出のみならず、弁護士が自宅不動産の評価について具体的主張を行うことが出来ました。また、本件自宅不動産の評価のポイントを理解していたことで、兄の主張する自宅不動産が1億5000万円とする根拠についての反論も具体的に行うことができ、最終的に調停で自宅不動産の時価は6700万円と認定されました。

3.Mさんの被相続人に対する特別な寄与の評価について

Mさんが父と同居を始めるにあたって、Mさんは円満な関係の配偶者と別居をしています。その理由は、医師から父の一人暮らしは極めて難しいこと、余命宣告をされていること、自宅で過ごすことに強いこだわりを持つ父のためを思ってのことでした。
そして、Mさんは同居開始後から父のために、通常期待される扶養の範囲をが大きく超えて、介護の面でも金銭面でもかなりの負担を無償でし続けてきましたから、このことをしっかりと評価してもらうために証拠をさがしました。
金銭等出資型の寄与については、Mさんが綺麗に保管していた自宅不動産のリフォーム、修繕費用など見積書と請求書(又は領収書)、Mさんの通帳の振込記録から立証を行うことができました。
療養看護型の寄与については、①関係医療機関からカルテを取り寄せ、②Mさんの別居する配偶者から、Mさんが行ってきた父への介護状況や当時のMさんの状況をヒアリング、③毎日Mさんが具体的に何を行ってきたかの記録、④ヘルパーを利用したり、家事代行を頼むとすればいくらかかっていたかなどのシュミレーションを行い立証と主張を丁寧にしていきました。
裁判所は、これらの事情を鑑みて、Mさんの寄与分を約850万円と評価しました。

このように、当事務所はMさんの利益を最大限に守るために、専門家(今回は不動産鑑定士)の協力を得たり、寄与の証拠収集を行い、調停の場で適切な主張と交渉を行いました。

最終的な解決

調停の最後の最後まで、裁判所から出された調停案について双方譲らない状態が続きましたが、最終的に自宅不動産はMさんが相続し、Mさんは兄に対して2300万円の代償金を支払い、その他財産(約500万)を兄が相続することで調停が成立しました。
遺産の総額に対しての法定相続分はひとり約3600万円ですが、当事務所においてMさんの特別の寄与を主張立証し、寄与分が850万円と認定されたことにより、Mさんが兄へ支払う代償金は2300万円まで負担を減らすことに成功しました。
当初兄から請求されていた代償金請求は5000万円でしたので、約5~6割分に当たる2300万円の代償金の支払いをもって解決する運びとなりました。

最後に

相続では、主な遺産が不動産という方は多くいらっしゃいます。しかし、不動産は現物で分けることが難しく、複数名での共有状態も望ましくありません。不動産の評価についても算出方法や時価の変動など、複雑な要素が絡むため、意見が対立しやすいため非常に不動産が主な財産の場合はトラブルになりやすいです。不動産を高く評価することが有利な方、不動産を低く評価する方が有利な方と立場が分かれることがあるため、依頼者の方の希望を叶えるために当事務所では戦略を練って進めております。
また、相続人が被相続人に対して有する扶養義務等、通常期待される範囲を超える介護や財産管理・維持の貢献を行った場合に、その貢献に相応する寄与分が相続分に加算されることがありますが、その主張立証は簡単なことではありません。
まずは、弁護士法人アジア総合法律事務所にご相談いただければと思います。

*プライバシー保護のため、個人情報が特定できない程度に抽象化しております。