「自分で、相続放棄の手続きを行いたい。」とお考えの方へ

今回は、相続放棄をすることを選択され、ご自身で手続きを進められることを検討している方向けです。

相続放棄をする人は増えている?

裁判所が発表している、司法統計の家事審判新事件の事件別件数によると、相続放棄申述の件数は令和元年度で、225,415件でした。

この10年前である、平成21年の相続放棄申述の件数は156 ,419件と発表されていますので、比べると明らかに増加しています。

相続放棄といえば、マイナスの財産がプラスの財産よりも多い場合に選択するというイメージがあると思いますが、最近では、都市部に住む子(相続人)が、地方の不動産の管理が難しいという面と、固定資産税や修繕費用が必要になってくるという金銭的な面から、地方の不動産を相続したがらないという事情もあるようです。

相続放棄をするには

相続放棄は、「相続しません。」と他の相続人に宣言するだけでは放棄できません

相続放棄をするには、まず、相続が開始されたことを知ったとき(大半は、死亡を知ったとき)から3か月以内に、「相続放棄申述書」という書類を作成し、必要な添付書類を準備し、亡くなられた方の最後の住所地の家庭裁判所に提出(申述)する必要があります。

亡くなられた方の最後の住所地の家庭裁判所を探す場合は、裁判所ウェブサイト参照

提出した書類を、家庭裁判所が確認(審理)し、家庭裁判所が申述を受理すると、相続放棄が認められたということになります。

相続放棄をすると、はじめからその相続に関して、相続人ではなかったものとして扱われ、マイナスの財産のみならずプラスの財産も、すべての財産が一切相続できなくなります。もちろん、遺留分もなくなります。

注意すべき点としては、相続放棄をしたあとに、プラスの財産が多額でてきたとしても、相続放棄の撤回をすることはできないので、相続財産の調査はしっかりと行いましょう。

また、相続放棄を検討している段階で注意すべき点は、亡くなられた方の財産の管理についてです。亡くなられた方の未払い分の支払いを、亡くなられた方の財産で行ったり、家具家電の処分や、賃貸借関係について解約手続きを行うと単純承認とみなされ放棄ができなくなりますから、相続放棄を検討している場合は、遺産については何もしないのが一番と言えます。

相続放棄をすると決めてからの流れ

  1. 住民票の除票、戸籍謄本等を集める
  2. 相続放棄申述書を作成する
  3. 家庭裁判所に、相続放棄に必要な書類を提出する
  4. 家庭裁判所から照会書が届いたら、回答して返送する
  5. 家庭裁判所に、相続放棄が認められる(受理される)と、相続放棄申述受理通知書が届く

相続放棄の手続きを行うにあたり、必要となる書類(上記流れの1と2)を確認していきましょう。

相続放棄に必要な書類は何か?

  • 相続放棄申述書
  • 相続放棄を申述する人の戸籍謄本
  • 亡くなられた方(被相続人)の除票(住民票)又は戸籍の附票
  • 亡くなられた方(被相続人)の戸籍謄本
  • 収入印紙
  • 郵券
  • その他

1.相続放棄申述書

こちらは、所定の書式があります。裁判所に用紙をもらいに行くか、裁判所のウェブサイトからダウンロードして手に入れることができます。記入見本もありますので参考にして作成します。

裁判所のウェブサイトからダウンロードする方はこちら

【全国共通】
相続放棄申述書(20歳以上用)、記入例(20歳以上用)

【福岡家庭裁判所専用】
相続放棄申述書
相続放棄申述書(成人用記入例)
相続放棄申述書(未成年者用記入例)

2.相続放棄を申述する人の戸籍謄本

相続放棄を申述する人の、本籍地がある市町村役場にて取得します。郵送で請求することも可能です。注意すべき点として、戸籍には「謄本」と「抄本」という種類がありますが、裁判所に提出する戸籍は「謄本」である必要があります。

3.亡くなられた方(被相続人)の住民票の除票又は戸籍の附票

亡くなられた方の住民票の除票か、戸籍の附票のどちらかが必要です。郵送で請求することも可能です。

住民票の除票を取得する場合は、亡くなられた方の住所地の市町村役場で取得します。なお、住民票の除票を取得する際には、”本籍地入り”を取得します。

また、戸籍の附票を取得する場合は、亡くなられた方の本籍地の市町村役場で取得することができます。戸籍の附票は、住民票所在地では取得できないので注意してください。(本籍地と住民票所在地が同一の市町村であれば同一役場で取得することは可能。)

戸籍のイラスト 相続手続きに必要な故人の出生から死亡までの戸籍ってなに?どうやって集めるの?

4.亡くなられた方(被相続人)の戸籍謄本

「2.相続放棄を申述する人の戸籍謄本」と同様ですが、亡くなられた方の本籍地があった市町村役場にて取得します。郵送で請求することも可能です。注意すべき点として、戸籍には「謄本」と「抄本」という種類がありますが、裁判所に提出する戸籍は「謄本」である必要があります。

なお、相続放棄を申述する人と亡くなれた方とが、同一戸籍に入っている場合は、戸籍謄本は1通で事足ります。

5.収入印紙

申述人1人につき、収入印紙800円分が必要です。(令和3年9月1日時点)

6.郵券

連絡用として、郵便切手が必要です。郵券の種類・組み合わせは、申述先の家庭裁判所に確認してください。

7.その他

同一の亡くなられた方(被相続人)について、相続の承認・放棄の期間伸長や、ほかの相続人が相続放棄の申述を行っている場合、既に裁判所へ提出されている書類は重複して提出する必要はありません

また、今回ご紹介した、必要書類は、共通した添付書類ですので、相続放棄を申述する人の相続順位によっては、追加で必要な書類があります。詳しくは、裁判所のウェブサイトをご確認ください。

裁判所ウェブサイト

相続の放棄の申述

相続放棄の書類を提出する方法

相続放棄に必要な書類の作成、添付資料を集めたら、亡くなった方の最後の住民票がある住所地の家庭裁判所に持ち込み郵送を行います(相続放棄の申述)。

遠方でなければ、持ち込むことをお勧めします。持ち込みであれば、書類の不備や記入漏れがあった際にその場で訂正することができます。持ち込みの場合は、作成した申述書に捺印した印鑑と同じ印を持っていきましょう

相続放棄に関する書類を提出したあとについて

家庭裁判所に、相続放棄の申述(必要書類の提出)を行ってからの流れを見ていきましょう。

家庭裁判所から照会書が届いたら、回答して返送する

相続放棄の申述後、家庭裁判所から「照会書」が届く場合があります。(届かないこともあります。)

この照会書は、本当にあなたが相続放棄を申し立てましたか?という意思確認を行うためでもあります。

照会書が届いたら、照会書の各事項に回答して、指定されている期限内に、署名捺印をして返送します。照会書に捺印する印鑑は、既に提出した申述書に捺印した印鑑と同じ印で行います。

家庭裁判所から照会書が届いた場合は、照会書に対しての返送がなされてから、家庭裁判所は相続放棄の審理を行います。

家庭裁判所の審判

家庭裁判所は、相続放棄の申述がされたら、申述を受理するか、申述を却下するか審判します。

家庭裁判所に、申述の受理の審判がされると(いわゆる、相続放棄が認められるという状態)と、相続放棄申述受理通知書が届きます

逆に、相続放棄の要件を満たしていない場合などでは、申述が却下されることとなります。

相続放棄申述受理通知が届いたら

相続放棄の申述が受理されたら、家庭裁判所より「相続放棄申述受理通知」が届きます。
相続放棄をする際の一連の手続きの最後に裁判所から発行される大切な書類です。いかなる理由があっても、受理通知書は再発行されない書類なので、大切に保管してください。また、債権者に相続放棄を証明するものの求めがある場合は、この通知書の写しを提出します。

ただ、債権者によっては、相続放棄受理通知書ではなく、「相続放棄受理証明書」という書類の提出を求めてくる場合があるので、その際は、相続放棄の申述をした裁判所に、「受理証明書」の申請手続きを行うと対象の証明書を発行してもらえます。1通150円の収入印紙(令和3年9月1日時点)が必要です。相続放棄受理証明書は、郵送での請求もできます。

相続放棄後の注意事項

相続放棄が受理されたからと言って、亡くなられた方の財産を消費又は自由に処分していいということはありません

民法921条3項
相続人が、限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき。ただし、その相続人が相続の放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後は、この限りでない。

相続放棄をした後であっても、亡くなられた方の財産の全部もしくは一部を隠匿したり、私(「ひそか」と読む。)に消費(相続財産を処分して原形の価値を失わせ、相続債権者に不利益を与えること)したり、亡くなられた方の預貯金を、自分のために使った場合など、単純承認したものとみなされます

また、相続放棄をしたとしても、他の相続人又は相続放棄により次に相続することとなる人が、亡くなられた方の相続財産の管理を始められるようになるまで、相続放棄前の財産管理と同様、自分の財産と同一の注意をもって、財産管理を継続しなければなりません。

相続放棄の手続きを、弁護士に任せる方がいいケース

相続放棄の法的手続き自体は、難易度が低い部類にありますので、相続関係が複雑でない場合では、ご自身で相続放棄の手続きを行うことも可能です。

しかし、相続放棄をするべきか否かを判断することは簡単ではありません。相続放棄をしたのち、やはり相続したいと心変わりしても、原則撤回はできません。
また、自分で相続放棄の手続きを行い、不備などが原因で相続放棄の申述を却下された場合、「再申請」はできません(被相続人1人に対して1回のみの申請しかできない。)。
このことからも、相続放棄をすべきか判断に迷っている場合や、相続放棄の手続きに不安を持つ方、相続放棄を絶対に失敗させるわけにはいかない場合には、できるだけ早めに弁護士に相談しましょう。

弁護士に相談する・任せたほうがいい具体例

  • 相続放棄をしたほうがいいのか否か、判断ができない場合
  • 亡くなってから3か月以上経過している場合(場合によっては、期限が過ぎていても相続放棄できる可能性がある)
  • 熟慮期間ギリギリになって多額のマイナス財産が判明した場合
  • 債権者から督促され、どう対応していいのか分からない場合
  • 相続放棄手続きの失敗ができない場合

相続放棄は、「相続開始を知ってから3か月以内」に、家庭裁判所に申述しなければなりません。そのためには、申述までに相続財産の調査や書類収集を済ませる必要がありますから、期限ぎりぎりになって相続放棄をしようと着手しても間に合いません。また、自己判断でどんどんと手続きを進めていき、「遺産を処分した(又は消費した)ものと見なされて、相続放棄手続きを受理してもらえなかった」「相続放棄をせず、相続してよかったケースだと気付けなかった」「債権者から催促で、一部支払いをしてしまい、相続放棄ができなくなった。」など、あとから取り返しがつかない状態になってしまうこともあり、相続放棄は難しいと言えます

弁護士に任せるメリット

・相続放棄をしたほうが良いのかどうかアドバイスをしてくれる
・相続放棄の手続き(書類の取得・書類作成・提出)を正確に迅速に進めてくれる
・他の相続人へ、相続放棄の説明をお願いできる
・期限を過ぎても相続放棄ができる可能性がある
・債権者の対応を、弁護士がしてくれる

弁護士には、相続放棄に関する一切の権限を委任することができます。なので、債権者からの催促にも、他の相続人への説明も、弁護士に任せることができます。相続放棄の法的手続き(書類作成)は、難しくないといわれていますが、一度限りの手続きを失敗しないために判断すること・進めることは簡単ではありませんので、専門家に相談して進めることが望ましいでしょう。

最後に

アジア総合法律事務所では、相続放棄をすべきかどうかのアドバイス、相続放棄の手続き、債権者への対応や、他の相続人への説明も弁護士が親身になって行っています。

当事務所に、「亡くなった父が借金をしていたみたいで、催促がくる。相続放棄をしたい。」とご相談・ご依頼をいただき、当事務所で相続財産の調査を行ったところ、消費者金融から催促がきていた借金には過払が発生していることが判明し、相続放棄をする必要がなくなったケースもあります。

「相続」についてお悩みの場合は、一度当事務所の弁護士までご相談ください。