遺言書について、知ってみよう

遺言書は、生涯をかけて築いた又は先祖から引き継いできた大切な財産を、本人の意思で、誰に残すかを示したものです。遺言書は、あなたが先に旅立ったあと、この世に残すことになる人たちへの最後の手紙とも言えるでしょう。

遺言書には、複数の種類があるということはご存じですか?現在一般的に利用されている遺言書の種類は、公正証書遺言、自筆証書遺言、秘密証書遺言です。今回は、そのうちの一つ、自筆証書遺言について詳しく知ってみましょう。

自筆証書遺言ってどんなもの?

遺言者本人が、遺言書をすべて(財産目録はデータ作成でも、通帳の写しなどでも可)手書きで作成する必要があります。紙とペンと印鑑があれば、作成することが可能です。コストはほとんどかかりませんので、手軽で自由度が高いといえます。

遺言書を自筆証書で作成するメリットはなに?

  • 紙(封筒もあれば尚よい)とペンと印鑑があれば、いつでもどこでも作成できる
  • ひとりで作成することができ、手軽
  • 自由に書くことができる

自分が作成したいタイミングで、低コストで誰にも関与されることなく自由に作成することができます。

遺言書を自筆証書で作成するデメリットはなに?

  • 形式不備がある場合、遺言自体が無効になる
  • 遺言者が手書きしなければならない(代筆不可)
  • 偽造される可能性がある
  • 遺言書の紛失の可能性や、遺言書の存在を知らない相続人が遺言書を発見できない可能性がある
  • 一部の相続人が、遺言書を隠す可能性がある
  • 家庭裁判所での遺言検認手続きを、遺言書を預かっていた人、発見した人又は相続人が行わなければならない
  • 遺言書の検認手続きが終わってからの、相続手続きとなるため、相続手続きを開始するまでに数か月要する

公証人が作成する遺言とは違い、遺言書の形式の不備のリスクや、遺言書の法定有効性についての争いが生じる可能性が高いといえます。
また、遺言書を作成した人が紛失してしまったり、生前見つからないようにわかりづらい場所にしまい込んでしまったがゆえに、相続が発生したときには、相続人が遺言書の存在を知らない又は見つけられずに時が過ぎてしまうこともあります。
せっかく紛争防止や、自分の想いを書き留めていたとしても、公正証書遺言と比べれば内容の実現だけでなく、法的有効性にもリスクがありえます。

自筆証書遺言はお勧めではないの!?

このように自筆証書遺言のメリットとデメリットを見比べていくと、デメリットのほうが多くリスクが高いことが気になりますよね。

当事務所にも、自筆証書遺言を見つけた相続人や、生前遺言書を書いていると聞かされていた相続人の方がご相談に来られる場合、

自分で遺言書を書いたといっていたけど、どこを探しても見つけられない。

遺言書の字が、母の字ではない。こんな字ではなかった。きっと誰かが書かせたのよ。

この遺言書が書かれた時期は、父はもう認知症になっていたんです。だからこの遺言は無効でしょ?

遺言書が本人の貸金庫に入れられていると思うけど、銀行が貸金庫をあけてくれない。

十年以上前に亡くなった父の遺言書が最近見つかった。もう父の財産は、何年も前に兄弟で話し合って分けている。遺言書の内容と違う分け方をしていて、遺言書の内容だと私はもっともらえたはずなのに…。

というご相談が非常に多くあります。

せっかく遺言書をしたためたのに、発見されない・隠される・偽装されるといったリスクにさらされ、
自分の死後の相続トラブルを危惧して作成した遺言書なのに、遺言書が原因で争いに発展する可能性があるのはとても悲しいです。

自筆証書遺言のメリットとデメリットを知ったうえで、自筆証書遺言を作成したい人は知っておこう。

自筆証書遺言のメリットもデメリットも把握したうえで、自筆証書遺言を作成しようとしている人にはもう一つ知っておいて欲しいことがあります。

自由度の高い自筆証書遺言の、デメリットの一部をカバーし、更に利用しやすいようにしようと、新しい制度が始まりました。それが、自筆証書遺言保管制度というものです。(詳しく知りたい方はこちらのコラムをご覧ください)

この自筆証書遺言保管制度を利用すると、自筆証書遺言ではあるけれど、遺言書を自筆証書で作成するデメリットの一部を解消できるものです。従来通りの自筆証遺言書デメリットと、もし自筆証書遺言保管制度を利用した場合のメリットを表にしたので、参考にしてみてください。

表を確認すると、自筆証書遺言保管制度を利用したとした場合は、自筆証書遺言のデメリットが多くカバーできますね。
注意していただきたいのは、自筆証書遺言保管制度を利用しても、カバーできないデメリットは残っているということです。

弁護士法人アジア総合法律事務所では、公正証書遺言の作成や、自筆証書遺言の保管制度を利用する際のリーガルチェックも行っておりますので、まずはお問い合わせください。

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小山 好文 弁護士
小山 好文 弁護士
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