大切な方が亡くなり、のこされた家族は、深い悲しみのなか、葬儀・法要の手配や、届出・相続手続きを行わなければなりません。それらの手続きには、期限があるものもあり、知らないから・忙しいからと後回しにするわけにもいきません。

今回は、初めて相続をすることになり、あまりにも急で、何をするべきなのかが分かない方向けに、必ず必要となる故人の出生から死亡までの戸籍の集め方をお伝えします。

相続手続きで必要な戸籍とは?

亡くなられた方の相続手続きを行うにあたり、必要な書類として提出を求められるのが、【被相続人(亡くなられた方)の出生から死亡までの連続した戸籍謄本】と、【相続人の全員の現在の戸籍】です。

「なぜ、相続手続きを行うのに、亡くなった人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本が必要なのか。最後の戸籍に、生まれた日も亡くなった日も載っているではないか。」と疑問を抱かれる方がいます。

故人の出生から死亡までの戸籍が必要な理由

出生から死亡までの連続した戸籍謄本が必要な理由は、亡くなられた方の相続人が誰かという相続人を確定させるためです。相続人を確定するには、子や親や兄弟姉妹の有無を確認していきます。戸籍謄本には、その戸籍がいつ、どんな理由で作られたのか、親子関係、婚姻関係、養親子関係といった事項が記載されています。最後の戸籍に全ての相続人の情報が載っているわけではないので、生まれたときからの亡くなるまでの戸籍謄本を一つずつ辿っていき、相続人を確定する必要があります。出生から死亡までの戸籍をそろえることで、隠し子やほかの相続人がいないことの証明にもなります。

相続人の現在の戸籍が必要な理由は、故人とのつながりを証明するためです。ただし、故人の現在(死亡)の戸籍に、相続人の名前の記載がある方の場合は、別途相続人の現在戸籍を取得する必要はありません。

戸籍謄本と戸籍抄本ってなに?違いはなに?

戸籍は、現行の戸籍のほかに、除籍、改製原戸籍という種類が存在しますが、いずれの場合でも、謄本(とうほん)と抄本(しょうほん)が存在します。謄本と抄本の違いを知っておきましょう。

  • 「謄本(とうほん)」・・・ 戸籍の記載の全部の写し
  • 「抄本(しょうほん)」・・・ 個人(戸籍に2人以上記載があるうちの1人分など)の写し

つまり、相続人確定をするには、戸籍の記載の全部の写しが載っている、‟戸籍謄本”を取得する必要があります。

全部で何通集める必要があるのか?

生まれた時から、亡くなるまでの戸籍を集めるのは、大変です。時間もかかることも多いでしょう。人にもよりますが、出生から亡くなるまでの戸籍は数通の場合もあれば、十通前後になる場合もあります。さらに、必要に応じて相続人の戸籍も確認する必要(子がいない場合、代襲相続が発生している場合など)がある場合は、全部で何十通もの戸籍を集めることもあります。

一番最初に取得すべき戸籍はなにか?

出生から死亡までの戸籍を集める場合、まず最初に取得すべき戸籍は、故人の死亡の事実がわかる戸籍です。亡くなられた方の本籍地を把握している場合は、本籍地で戸籍謄本を取得します。さらに、「相続に必要な戸籍があれば一式お願いします。」と添えると、同一市町村に保管されている除籍や原戸籍がある場合はいっしょに出しくれます。

本籍地がわからない場合の、本籍地の確認方法

もし、本籍地がわからない場合は、亡くなられた方の最後の住所地の管轄である市役所・役場で、亡くなられた方の住民票(本籍地入り)を取得することで、最後の戸籍がある本籍地がわかります。

戸籍の取得は、市役所に行かなくてもできる!

戸籍は役所に行かないと、取得できないイメージはありませんか。市役所の窓口が開いている時間に行くことが難しい、戸籍がある場所は遠方だ、といった場合もあるでしょう。実は戸籍等は郵送でも取り寄せることができます。窓口に行くと当日取得することができますが、郵送の場合は取り寄せに時間が掛かります(返送されてくるまで1週間以上かかる場合もある)が、役所が遠方にある場合や受付時間に行くことができない場合には郵送請求を利用しましょう。郵送請求を行う際には、添付しなければならない書類がありますが、各自治体により異なるので、郵送請求を行う前に必ず事前に確認をしてください。「対象の市町村名 郵送 戸籍」で検索すると、各自治体の郵送請求に関するページが出てくるので参考にしてください。

故人の出生から死亡までの戸籍を集める

亡くなられた方の最後の戸籍を読んでみると、「従前戸籍」が記載されています。これは、ひとつ前の戸籍(本籍地および筆頭者)を示していますので、次に集めるべき戸籍は、「従前戸籍」として記載されている、本籍地・筆頭者の戸籍です。従前戸籍に書かれている地を管轄する、市町村の役所・役場にて対象の戸籍を取得しましょう。

取得した戸籍を読むと、1つ前の戸籍の情報が記載されています。戸籍が作られた年月日が、故人の誕生日よりも前に作成されている戸籍にたどり着くまで集めると、出生から死亡までの連続した戸籍を集めることができます。

相続人を確定させるとは?

相続人の優先順位は、法律で定められています。
例えば、故人の配偶者は常に相続人となり、配偶者以外の人は次の順位に従って相続します。

相続人の優先順位

常に相続人 配偶者
第1順位 子(養子)*1
第2順位 両親(養父母)*2
第3順位 兄弟姉妹*3

*1…子がすでに亡くなっている場合は、孫が代襲相続(直系卑属)
*2…両親がすでに亡くなっている場合は、祖父母(直系尊属)
*3…兄弟姉妹がすでに亡くなっている場合は、その子(甥姪)が代襲相続

最後に

今回は、相続手続きに必要な、出生から死亡までの戸籍の集め方について簡単にお伝えしました。

相続手続には、さらに相続人確定のために必要な戸籍があります。昔の戸籍は、手書きで作成されているので字も読みづらく、出生から死亡までの戸籍をたどって集め、相続人を確定する作業のはなかなか骨折りな作業となります。

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小山 好文 弁護士
小山 好文 弁護士
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